【自転車通学特集】 第3回「今さらだけど自転車の乗り方の基本を学ぶ」

中高生は自転車に乗れるようになってから、かなりの月日が経っています。そのため、自分の体の一部と思えるくらい、自然に自転車に乗っていることでしょう。しかし、ドライバーや長く自転車に乗り続けている人間から見ると、自転車に乗る中高生はとても危うく思えます。それは速度も運動特性も異なる交通手段が入り交じった道路において、他者に対する配慮を欠いた振る舞いをする自転車がとても多いからです。

神奈川県茅ケ崎市で市民と行政が協働して推進している『ちがさき自転車プラン・アクション22』の益田代表も、「朝の通学時間帯に自転車通学する生徒さんが集中するため、横並びで走る光景が多くみられます。さらに、雨が降ると傘を差して自転車に乗るお子さんも出てくるため、歩行者の顔に傘が当たりそうになった事例もありました」と語ります。

これまで自転車は交通弱者とされ、ルールやマナーを破っても大目に見られてきました。しかし、近年はとりわけ歩行者に危害を与える行為に対し、厳罰が下されています。これは未成年であっても同様です。今回は自身にとっても、そしてまわりの人にとっても安全な乗り方を改めて解説していきます。

意外と知らない正しい発進の仕方

まず最初にご紹介するのは、正しい発進方法です。
一番大切なことは周囲の状況を見極めるため、発信する前(できれば停止する前も)に後ろを振り返って、安全を確認することです。

また、中高生に限らず自転車に乗る人の多くが、片足をペダルに載せ、もう片足で地面を何度か蹴りながら自転車を発進させていることでしょう。いわゆる〝ケンケン乗り〟です。この乗り方は自転車にまたがってペダルをこぎ始めるまでは自転車がふらつきがちで、後方からオートバイや自動車が近づいてきたとき接触する恐れがあります。

今回は意外と知られていない正しい乗り方を順番ご説明してみましょう。
① 発進する前に、まず後方を確認する
② サドルに腰掛けないで自転車のフレームをまたぎ、片足をペダルに載せます。
③ ペダルを踏み下ろしながらもう片方の足で地面を蹴ります。そうするとすぐにスピードが上がって自転車はふらつきません。
④ 踏み下ろした足と両手を支えにヒザとヒジを伸ばせば、お尻は自然とサドルに収まります。

停止するときはその逆です。
① ブレーキをかけてスピードが落ちたら、ペダルから離した片足を前に伸ばします。
② お尻を前にずらしながらペダルから離した足を地面に下ろします。
③ しっかり止まったら、もう片足も地面に着きます。


発進する前に、まず後方を確認する


ペダルを踏み下ろしながらもう片足で地面を蹴る


踏み下ろした足と両手を支えにヒザとヒジを伸ばせばお尻は自然とサドルに収まる

ブレーキをかけるときは前後いっしょに

携帯電話を操作しながらの片手運転……などというのは論外ですが、両手でハンドルを握っている場合でも、片方のブレーキしか利用していない人はいるのではないでしょうか。ブレーキは前後いっしょにかけることで必要な制動力が得られるよう作られています。ですから特に雨天の場合など、片方のブレーキだけでは自転車が思うように止まってくれません。

だからといってブレーキを思い切りかけると車輪がロックし、後輪なら車体が左右に振れて転んでしまったり、前輪なら下手をすると前転宙返りする羽目になります。


ブレーキは前後いっしょにかける

右左折と進路変更の際は、必ず後方を確認

前を走る自動車がウィンカーを出さずにいきなり進路を変え、ヒヤッとした経験はありませんか? 自転車も右左折や進路変更をする際には手信号を出すことになっていますが、ごく一部の人を除いてそれは守られていません。つまり多くの自転車は、ウィンカーを出さない自動車と同じ状態で走行しているわけです。

本来、後ろから近づいてくる自動車やオートバイとぶつかるのを避けるには、手信号を出してこちらの意志を伝えるのがベストです。とはいえ手信号を出している間は片手運転になってしまうというリスクもありますので、一足飛びにそれを望むのは難しいでしょう。となると最低限やるべきなのが、右左折や進路変更をする前に後方を確認すること。障害物をよけたり駐車車両を追い越したりするときは必ず実行しましょう。そして、近づいてくる車両を確認した場合は必ず停止。仮に優先権がこちらにあったとしても、ぶつかってケガをするのもこちらです。おとなしく譲るに越したことはありません。


右左折や進路を変更する際は、必ず後方を確認する

自転車は車両。車道の左端走行が原則

本来自転車は自動車と同じ車両ですから、歩道ではなく車道を走行するのが原則です。しかし、日本では交通事故の死者数が1万7000人近くとなり“交通戦争”と呼ばれた1970年代、緊急避難として一部の歩道走行が認められました。そして、年が経つにつれ例外とされていたものが逆転、現在は自転車が歩道を我が物顔で走行するようになっています。

その結果、交通事故全体が減少傾向にあるなか、自転車対歩行者の事故は10年前との比較では1.5倍、近年でも横ばいが続き、交通事故全体のなかで占める割合は増しています。さすがにこの状況を看過することはできなかったのでしょう。平成23年に警察庁は通達を出し、「自転車は原則として車道を通行する」ことを徹底する方針を打ち出しました。これは報道でも大きく取り上げられましたので、記憶にある人も多いでしょう。

もちろん、今でもおよそ4割の歩道は自転車の通行が許可されていますし、それ以外の歩道も高齢者や子どもについては歩道の走行が認められています。しかし運動能力に優れた中高生が運転する自転車は、車道の左端を走行すべきでしょう。歩道では歩行者との速度差によって、むしろ事故の加害者になりえます。

そうすれば同じ車両である自動車やオートバイが、信号を無視したり右側を逆走したり、無灯火で走行することがないことにも気づきます。自転車が車両であることを自覚して車道を走ってこそ、交通ルールも身につくのではないでしょうか。

前述したちがさき自転車プラン・アクション22の益田代表も、「市内の高校生がおのずと交通ルールの大切さに気づくよう努めています。そのため車道の左端走行を守ろうというプレートや、思わず着たくなるレインウェアを高校生自身にデザインしてもらいました。今ではそれが車道右側の逆走や傘差し走行の減少にひと役買っています」と語ります。


最も危険な車道の逆走。正面衝突したら互いに大ケガすることになる

次回

お子さんが毎日利用する通学路には、できるだけ安全な道を選びたいものです。次回は通学路にはどのような危険が潜んでいるのか、それを避けるにはどうすればいいのかを学びましょう。